ストレスチェックの実施は多岐にわたる業務です。基本方針の表明から始まり、規程を作成して調査を実施。医師による面接指導や集団分析まで進むと、一息つく担当者の方も多いかもしれません。
しかし、まだ大事な作業が残っています。
従業員50名以上の事業場において、ストレスチェックの実施と同様に重要となるのが、労働基準監督署(以下、労基署)への「結果の報告」です。こちらも法的な義務となっていますので、しっかり理解しておく必要があります。
本記事では、担当者が押さえておくべき報告書の書き方や提出期限、万が一提出を怠った場合の罰則リスクについて、具体的な記入例や実務上の注意点を交えて解説します。
労基署への「実施状況報告書」の提出義務とは?
常時50名以上の労働者を使用する事業場は、労働安全衛生法(第100条)に基づき、年1回のストレスチェック実施後、所轄の労基署へ結果を報告する法的な義務があります。
提出書類の正式名称は「心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書」といい、企業が法令に従って正しく制度を運用し、高ストレス者に対する面接指導などの事後措置を行っているかを行政が確認するための重要な役割をもっています。
また、提出義務に関して担当者が注意すべきなのは、提出義務は「企業(法人)単位」ではなく「事業場(店舗や支店)単位」で発生するという点です。
たとえば、全社で100名の従業員が「本社60名、A支店40名」の場合、報告義務があるのは本社のみとなります。ただし、2025年5月の法改正により、2028年5月までには50人未満の事業場でもストレスチェックの実施自体は義務化されることが決定しているため、全社的に運用体制を整備する必要があります。
提出期限と書き方の基本ポイント
法令上(労働安全衛生規則第52条の21)、「毎年〇月〇日までに提出」といった全国一律の期日は設定されておらず、「一年以内ごとに一回、定期に」提出することと規定されています。
一般的には、各企業が設定した受検期間が終了し、医師による面接指導などの事後措置がすべて完了したタイミングから、概ね1〜2ヶ月以内を目安に提出します。提出忘れを防ぐため、「毎年〇月をストレスチェック月間とし、〇月に労基署へ報告する」といった社内サイクルを固定化することが推奨されます。
書き方の基本と「人数の数え方」の注意点
報告書のフォーマットは、厚生労働省の「労働安全衛生法関係の届出・申請等帳票印刷発行システム」から作成可能です[※1]。ここで担当者が注意すべきなのは、2026年4月現在で義務発生の基準となる「常時50人以上」のカウントと、報告書に記載する「対象労働者数」の基準は異なるという点です。
- 義務発生の基準(常時50人):パートやアルバイト、派遣社員(派遣先の場合)も含め、事業場で常勤しているすべての労働者をカウントします。
- 報告書の「対象労働者数」:実際にストレスチェックの実施義務対象となる人数を記載します。具体的には「契約期間が1年以上(見込み含む)」かつ「正社員の週所定労働時間の4分の3以上働く人」が対象です。したがって、事業場の総従業員数と対象労働者数が一致しないケースは多々あります。
- 派遣社員の扱い:派遣社員は、派遣先(自社)の「常時50人」のカウントには含めますが、ストレスチェックの実施と労基署への報告義務は「派遣元(派遣会社)」にあります。そのため、自社の報告書の「対象労働者数」には含めません。
- 検査を受けた労働者数:対象労働者のうち、実際に受検した人数を記載します。
提出を忘れた場合の罰則リスク
ストレスチェックを実施したことで満足し、報告手続きを忘れるケースは少なくありませんが、報告義務を怠ると法令違反となります。現在の法律では、未実施と未報告とで罰則のニュアンスが異なります。
- 50万円以下の罰金(未報告・虚偽報告):労働安全衛生法(第120条)により、報告書の未提出、または虚偽の報告を行った場合は、最大50万円の罰金が科される可能性があります。
- 安全配慮義務違反による損害賠償リスク(未実施):現在のところ、ストレスチェックを「実施しなかったこと自体」に対する明確な罰金規定はありません。しかし、事業場には従業員への「安全配慮義務」があり、未実施は実質的な労働契約法違反とみなされるのがほとんどです。万が一労災等が起こった場合、企業側に不利な証拠として提出され、高額な損害賠償に繋がる恐れがあります。
産業医が見つからないなど、何らかの事情でストレスチェックの実施や報告が遅れてしまう場合は、放置せずに事前に労基署へ相談し、対応や措置を仰ぐことが重要です。
【記入例】報告書の具体的な記入イメージ(一部公開)
報告書を実際に作成する際の記入イメージです。該当者がいない項目も空欄にはせず、必ず「0(ゼロ)」と記入してください。
[労働保険番号]〇〇-〇〇〇-〇〇〇〇〇〇-〇〇〇
[対象年]令和〇年
[事業の種類]〇〇業(※日本標準産業分類に基づき記載)
[事業場の名称]株式会社〇〇〇〇〇〇支店
[検査を実施した者]〇(※1~3の番号で所属状況を記入。外部委託の場合は該当番号を択)
[在籍労働者数]〇〇人(※派遣社員を除外した、実施義務対象者の人数)
[検査を受けた労働者数]〇〇人(※実人数を記載)
[面接指導を受けた労働者数]〇人(※該当者がいなければ「0人」と記載)
[集団ごとの分析の実施の有無]1(※1:実施した/2:実施していないのいずれかを選択)
[産業医の氏名]〇〇〇〇(※代筆・印字可。必ず自社が契約する産業医の氏名を記載)
[事業者職氏名]代表取締役〇〇〇〇(※本社なら代表取締役、支店なら支店長などの役職名と氏名を記載。代筆・印字可)
すべての項目に漏れがないか、数値に矛盾がないかを確認し、所轄の労基署へ提出します。提出後は、受付印のある控えや電子申請の受信通知をエビデンスとして必ず保管してください。
まとめ:実施から報告まで、一貫した仕組みづくりを
労基署への報告書の書き方や人数の数え方、提出期限について解説してきました。対象労働者の数え方や派遣社員の扱いなど、初めて担当する方にとっては少し複雑に感じられるかもしれませんが、順序立てて整理すれば決して難しくありません。 罰則リスクを避けるためにも、社内で実施から報告までのサイクルを固定化し、漏れなく対応できる仕組みを整えていきましょう。